幸福の木365諦念1USA

BMを訪れるとお祝いはまだ続いていた。

リョウっ。

スタッフをかき分けて近寄ってきてくれる。

凄いねっ、もし俺だったらとっくに眠っちてるよ。

みんなハイになってるからなでも流石に実は仮眠したんだ。

リョウに会えたからこの後帰るよ。

わざわざ待っててくれたんだ。

今から空港か?

うん、いろいろありがとう。

なんか複雑だな。

え?

だって俺が誘っちまったせいで危険な目にあっちまって。

俺は首を振った。

誘ってくれてありがとう。感謝してるよ。

本当かっ?

優勝したんだよ?

日本に帰ったら稼ぐって大口叩いてたから助かったよ。

俺ってど素人だから。

そうか日本で

そうだよな、ハクは付いたよな。

次からは俺の師匠にヒデを加えていい?

ええっ!もっ、もちろんさっ。

なんか照れるなじゃあ、俺は智を加えておくよ。

え?

俺が優勝できたのは智のおかげだよ。

あのままお前に会わなかったら、きっと勝てなかったと思う。

本当にあるがとなっ。

よくわかんないけど、助かったならいいか?

ふふっ

俺たちは固く握手を交わし合っていた。

そのままヒデに連れられて上の階へと連れて行かれる。

シャルルはずっと仕事だよ。

忙しくなるもんね。

違うんだ。

きっと自分からリョウに言わないから。

何を?

マスコミ対策だよ。

新人戦で優勝したのに事件に巻き込まれて大変だって報道がでてでも、それっきりだろ?

おかしな事を書かせないように、捜査に協力って名目で追及できないくさせてる。

シャルルはいろんなところに影響力があるからね。

確かに色んな憶測がとんでもよさそうなのに、捜査に大会サイドも捜査に協力しているってだけで

今は、こっちに注目してるけど

新人戦てある意味目玉だからこんなに騒がれないって珍しいんだ。

そうか。

シャルルが。

大きな扉が開かれて俺だけ入るように勧められた。

後ろにいた国分が少し戸惑った様子を見せたが、俺は頷いて一人で入ることにした。

パタンッ

シャルル?

シャルルは俺に気付いて、電話をしながら身振りで横を指した。

応接に座れという事らしい。

机の上には書類が山のように積まれていた。

ああそうだよろしく頼むよ。

ようやく電話が切れた。

忙しいんだね。

おかげさまでね。

ヒデのオファーが山ほど来ていて内容を確認するだけでてんてこ舞いなんだ。

これでもスタッフが一度振り分けたんだがな。

仕事の山

リョウへの依頼もあるが断っておくよ。いいね?

うん、ありがとう。

はぁ。

シャルルはてっきり向かいに腰かけると思ったが、俺のすぐ隣に腰かけた。

mabellelune

Esprequetuesmavie

え。

だが、次の瞬間息が止まるほどキツく抱きしめられていた。

シャルル?

そして、ゆっくりと力が抜けていく。

ごめん空港に見送りにいけないんだ。

代わりにうちのスタッフに送らせてくれ。

それは。

俺は苦笑を隠せなかった。

ありがとう。

でも、警察の人が連れて行ってくれるんだ。

国際手配犯に逃げられてるから、まだ危ないんだって。

そうか随分と。

え?

いや、そうだね。

犯人が捕まっていないなら、まだ油断はできないね。

シャルル、本当にありがとう。

シャルルの協力がなかったら新人戦に出れなかったよ。

俺はそうだなその通りだ。

シャルル?

この次は、私のガードに揃えさせてもらうよ。

シャルルはそう言って不敵な笑みを見せて俺を驚かせた。

ぷっ。

リョウ?

ありがとう。

私は本気だよ。フランスに来ることがあったら、必ず連絡を。

そう言うと彼はメモを渡してきた。

全力でサポートさせてくれ。

わかった。

俺がフランスに行くことなんてないだろうけど、シャルルにはそう答えておいた。

そして、再び抱きしめられる。

さっきみたいに堅い抱擁じゃなくってもっとソフトタッチだった。

私は君を本当に息子のように思っているよ

いつでも、忘れないで。

ありがとう。

優しい香りが広がっていた。

大好きだった香りが

ジャン

リョウに別れを告げたかったが、残念ながら仕事と重なっていて無理だった。

もっと時間があったらな

空港にはいかなかったんだ。

見ての通り、激務でね。

シャルルは俺を部屋には通してくれたが、一向に休憩する気はないようだった。

意外だね。

ん何だい?

シャルルの事だから、もっと強引に引き留めるかと思った。

まさか冗談だろ?

冗談じゃないよ。

シャルルにならそれが出来る。

それにシャルルのガードだったら、あんなへまをしなかったでしょ?

どうかな。

シャルルの表情は特に変わらない。

指名手配されてる様な奴に狙われてるなんて、リョウも気の毒だよね。

ああそうだな。

シャルル?

ん?

ほんとうは面白がってるの?

何の事だ?

やっと視線を上げてくれた。

俺を訝しそうに見つめる眸

あの時なんで笑ってたの?

あの時?

昨日だよ。

部屋を出て行けって行った時

何かおかしな事でもあった?

さあ覚えがないなぁ。

そう。

一体どうしたんだい?

リョウの誘拐未遂だけど関わってないよね?

驚きを隠せない眸が俺をジッと見ていた。

一体何を言っているんだい?

シャルルが関係ないならいいんだ。

関係があるわけがないじゃないかっ。

シャルルの言葉にホッとする。

一体何だってそんな事?

だって、シャルルがあんなにリョウに夢中だったから。

だからって、誘拐なんてするわけがないだろ?

大体誘拐してその後は?

フランスに連れて行っちゃうとか?

シャルルはついに笑いだしていた。

そうか、その手があったんだな

今後は参考にしよう。

嘘だよ悪かった。

そんなことしなくてもまた会えるだろ。

え?

昨日は彼とまた会う方法を思いついて嬉しかったよ。

でも、リョウはアメリカには来ないでしょ?

ああだから、だったら私が日本に行けばいいだけだ。

大真面目な表情でそんな事を簡単そうにつぶやくと、再び書類の山に戻っていた。

この忙しくて時間のない人が?

俺は呆れた声も出なかった。